パブ アルチュー・デ・ランボー。素敵な名前です。
去年久々に神戸に帰り、ずっと行きたかったお店へようやく行くことができました。
店主のノリコさん
Artu De Rimbaudは、三宮の東門街にあったbarで、そちらは今も別の方が引き継いでいるようですが、元々東門街でArtu De Rimbaudのマスターであった市野さんが奥さまと水道筋の商店街で始められた新しいbar(と言っても、もう何年も経っていますが)
水道筋商店街は私にとっても小さい頃からなじみのある場所であり、結婚する前の一年間、祖母の家に一人で住んでいた頃には、ここの銭湯を利用し、普段の買い物もこの商店街で。
ここにはなんでもある。源泉の銭湯も美味しいお豆腐も新鮮な野菜も魚も肉も。風呂上がりに一杯飲める大衆酒場も串カツやも、手頃な値段で食べれるモーニングも。神戸のモーニングは安くても、ちゃんとパンと珈琲が美味しいのは基本。
私はよく介助の夜勤明けに灘温泉に入って、近所の喫茶店でモーニングを食べていました。
と、私がArtu De Rimbaudの話をしようとすると、とめどなく自分語りになってしまうのです。
去年亡くなられたマスターの市野さんのことを書くにしても。
市野さんと会ったのは、市野さんの友人を通して。
20歳の頃から東京に上京して暮らしていたけど、20代から30代の間に何ヶ月か神戸の実家へ帰っていた時期。
生意気盛りと何か鬱屈したものが混ざり合ったそんな時に、市野さんの東門街のbarに連れて行ってもらいました。
当時の私は特に年上の男性から偉そうに言われることを嫌悪していたので、市野さんに対しても初対面で打ち解けるようなことはなかったと思います。
でも気がついたら、博学な市野さんと話すことが楽しくもあり、強烈な個性の市野さんの純粋な部分、本当にアートやお酒、文学が好きというその部分で、この人はもの凄い正直な人なのかも?と思い、短い期間ではあるけれど一緒に遊んでもらったりしていました。
市野さんが癌になったと聞いたのはだいぶ前で、その後結婚したらしいというのも風の噂で聞いていました。
奥さまの書いているブログを読んで、市野さんは本当に素敵な人と結婚したのだなと思っていました。
Pub Arthu De Rimbaud雑記
久々に心に響くブログを読んだなと思ったのです。
誰かの不在を心から悲しむこと、そんな自分を励ましながら日々を生きること。プロとしてお店に出すものに手を抜かず、でも楽しみながら料理を作り続けていること。
めっちゃ素敵な人やん!いつかお会いしたいと思っていました。
今回お店に伺って、馴れ馴れしいのが好きではないこともあって、市野さんの知り合いだとは言わずに、カウンターからは少し離れたテーブルで一人で飲んでいました。
手頃な値段のおつまみセットを頼んだら、予想に反して、ローストビーフ、豆のマリネ、ポテトサラダ、バケットにきのこのオイル煮とかあまりにも盛りだくさんで(500円ぐらい)思わず小さく、うぁ!と声をあげてしまいました。
最初はワインを一杯飲んだのですが、奥で新しいボトルの栓を開けている音がしました。
今の店主である奥さまはシェリーが好きとのことで、次にシェリーを一杯頂いて、そのシェリーがあまりにも美味しくて!
次にスコッチを一杯頂いたほろ酔いの頃に、ようやく実は市野さんの知り合いですと切り出し。
一緒にカウンターで飲みましょうよと声をかけてもらい、市野さんの好きだったスコッチで献杯を。
ノリコさんが、このお店のことについて、「いっちゃんにとってお店は窓やから、窓は開けておきたい」と思ったというようなことを話されていて、今もその言葉がずっと頭の中にあるのですが、市野さんは最後まで愛されて、好きな生き方を貫いて、自分に正直に生きた人なんだと思いました。
最初、お店のテーブルでメニューを見た時に、本当にあっさりしたメニューで、商店街の中にある気軽なbarできっとこういうメニューなら入りやすいだろうなと思ったのですが、カウンターに来てみたらずらっと並ぶお酒。
そして、市野さんの秘蔵のお酒の棚。
私が神戸に帰る理由と場所ができた。もちろん一人でもまた行くつもりですが、大切な人を連れて行きたい。
Pub Arthu De Rimbaudは私にとって、そんな場所です。