ここからそこまで
2012.01.27 Friday
去年、映画「その街のこども」という映画を池袋で見終わった後に、来年は私もあの場所へ行ってみようと思うことが出来た。
映画の中では、あの神戸の震災にうしろめたさを抱えた、自分よりも若い世代のたまたま出会った2人が街を歩く。
その街は、どの場所も自分の知っている場所ばかりだった。
もし私が今、あの場所へ行くことができても、あなたがその場所へ行くことは、5年後かもしれないし、10年後かもしれないし、行くことはないかもしれない。
そのことが淡々と描かれていることが、そのことを柔らかく肯定してくれるような、そんな気持ちになったから。
これは自分だけの問題ではなかったんだ。
やっと、そう思うことができた。
震災の時には神戸から少し離れた郊外に住んでいたので、実際には被災していない。
その年に東京に写真の勉強のために出たので、ずっと東京で自分のことと、写真のことだけで精一杯で神戸のことを振り返ることも出来なかった自分を、ずっと後ろめたく思っていた。
神戸を撮ることはあっても、神戸の写真を誰かに見せることは、その後ろめたさをともなうことで、ずっと出来なかった。
少し、ホームページに載せてはいるけれど。その先へ進むことはできなかった。
もうひとつ去年、写真を掲載させてもらった月刊誌「世界」の、写真に添えた言葉を読んで、近いことが書かれていると、ある人の本を教えてくれた方がいて、その本は作品社という出版社から出ている、安克昌さんという方の「心の傷を癒すということ」という本だった。
この方は、阪神大震災で自らも被災しながら、避難所などでカウンセリング・診療などの救援活動を行っていた精神科医。
本当に残念なことに、2000年に39歳の若さで病気で亡くなられた。
この本を読んだことが去年、自分にとって本当に大きいことだった。